ファインダー

ファインダーを使ったことがありますか?
厚紙等に四角い穴をあけたものなら何でもファインダーになります。市販のデスケルというものでもOKです。もちろんカメラのファインダーでもOKです。

finder:手作りファインダー image.ashx:デスケル

例えばテーブルの辺が画面に対して水平になるのは
1.テーブルの真正面から見ている
または
2.テーブルの辺が目線と同じ高さにある
ときだけです。
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少しでも脇にそれて見るとテーブルの辺は画面に対して角度がつきますが、これが見落とされがちなのです。特に人物を描いているときなど、モデルに気をとられてモデルが座っている椅子や床がどう見えているかをいい加減に描いてしまうケースが多いのです。
finder_kakudo

「テーブルは水平だ」という事実(知識)は正しいのですが、「自分が描いている画面に対しては角度がつく場合がある」という
知覚を受け入れるのは意外と戸惑うものです。ファインダーを使うことで実際にどれくらいの角度がついているかをチェックできます。

全体主義(2)

国境を越えて

離れた部品同士をつないだ仮想の
傾き線も利用しましょう。
モチーフの2点間(どこでもいい)を線でつなぎ、あなたの画面上の傾きと一致するか比べてみましょう。
1回だけではあまり効果はありません。何回も場所を変えて繰り返すことで、最終的に正しい形に「収束する」ことを狙います。
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頭からつま先まで びゅ〜んっと、視線はあらゆる部分の境界を横断します。画面が若いうちに「長旅」することで視野をひろげましょう。
画面の中に実際に傾き線を描き込んでしまってもいいじゃないですか。
このときモチーフに対してできるだけ画面が平行になるようにイーゼルをセットすると角度の比較がしやすくなります。


全体主義(1)

視線を飛ばす

ひとつの部分をずーっと凝視していると、全体が見えなくなることがあります。
時間をかけてたくさんのディテールを詰め込むことよりも、その部分が
「全体の中で占める位置(役割)」を意識することが先決です。
視線をあちらこちらに飛ばし、全体を見るクセをつけましょう。
よく「時々絵から離れてみなさい」と指導されるのは、部分への近視眼的集中状態から離れることを「行動」として習慣づけるためです。

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ひとつの方法として、眼などの目印になりやすい部分から仮想の垂線を降ろしてみましょう。
この仮想の垂線の通り道付近にある部分との位置関係を見るのです。
特に「頭」と「つま先」など離れている部分を重点的にチェックしましょう。

絵画における「全体」とは「部分の総和」ではなく「関係の把握」です。

短縮法(3)

短縮法にチャレンジ!

短縮法は特に人物を描くときに必要となります。
「身体測定中」みたいなポーズでもない限り、たいてい体のどこかが短縮されて見えるものです。

worksample24
図のように座った人物の場合、脚や腕の一部が本来あるべき「円柱状」に見えなくて困ってしまいます。
ある先生が言ってました:
「そういうときは側面に逃げるのです!」
・・・ダメですよ逃げては。
自分の知識ではなく、今の視覚に忠実に描けるかチャレンジしてください。
自分との闘いです。慣れてくるとさらに難しいポーズにチャレンジしたくなります、きっと。

短縮法(2)

車の運転ができるのはなぜ?

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右折車線から曲がろうと思います。まず注目するのは、対向車ですね。
対向車の上下方向の位置や、大きさの違いを見分けて自分との距離を把握します。その判断の根拠となる差異は微妙ものですが、上空から自分と対向車との距離を測らなくてもタイミングよく右折できるものです。
ワインボトルの側面が充分に見えていなくてもボトルの長さ(奥行き)を知覚できる、ヒトの視覚の性能を信じるべきです。

slide0026_image110「死せるキリスト」マンテーニャ 1480
足下からキリストの遺骸を見たこの絵は、人体が「円柱状のパーツの寄せ集め」だという私たちの「知識」に揺さぶりをかけます。
人体は見方によっては山脈の連なりのように見えることもあります。

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短縮法(1)


「短縮法」=「自分との闘い」

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「ワインボトルを描いてください」と言うと、たいていの方は上のようにボトルを描きます。

ワインボトルの「細長さ」「立っている状態」、これが最初に浮かぶ印象のようです。

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迷わず下図のように描く方はよほどひねくれたユニークな感覚の持ち主でしょう。
このように見える位置から描くことを
「短縮法」と言います。
「短縮法」において重要なのは、モチーフについて自分が「知っていること」をいったん忘れることです。



頭を描くのにひと苦労?

「正中線」「2本の水平補助線」= 「剣道のメン」

これを意識すると
1. 骨格がしっかりする
2. 目鼻などパーツの取り付け位置が把握しやすい
3. 見上げor見下げ? モデルとの位置関係が意識できる
といったメリットがあります。

これらの補助線は実際には存在しませんが、「お目め!」「お口!」といった印象の強いパーツの主観(思い込み)に引きずられるのを防ぎ、ありのままに知覚するためのひとつの道具です。
この
「メン」の姿勢を意識する癖をつけるのです。ここでも頭部を「見上げている」のか「見下げている」のか意識することが大切です。

faceguard
正中線・・・表面を沿う中心線      
2本の水平補助線・・・髪の生え際からあご先までを3等分する線。眉頭と鼻の下に位置します。さらにこの間に耳が入ります。
この「標準」からのズレがそのモデルの「個性」となります。

あなたの眼の高さはどこ?

「眼の高さ」を意識するとそして空間に対する理解が進み、デッサンがグッとリアルに、楽しくなります。
あなたの「眼の高さ」はそのまま「水平線」と一致します。
モチーフをいくつかの高さで輪切りにしてみましょう。

手前(こちらから見えている表面)の断面線は:
見上げている部分・・・・・
上に凸
見下げている部分・・・・・
下に凸

また、目線と同じ高さでの断面は1本の線となります。(当たり前ですが、これがなかなか受け入れられません)
さらに軸の傾きを意識することで、表面にくっつくパーツ類(眼、鼻など)の位置がうまく把握できるようになります。

perspective
軸の傾き具合はどう? 見上げているのか、見下げているのか?


封筒の使い方(3)

(3)封筒の内部を分割してゆきます。
モデルを
「ポジのスペース」、その余白を「ネガのスペース」と呼びます。
この「ネガのスペース」に注目することで腕や胴といった「知識としての立体物」からいったん離れ、「形」に対する感覚を養います。三角形、四角形、だ円・・・など2次元の形です。
(あとでモデル表面のトーンを付けるときには「立体だ!」と意識しますが・・・知覚モードの切り替えです)

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「グラス」を正確になぞろうとするより、余白の「人の横顔らしき形」を意識してなぞった方が楽に正確に輪郭が描けそうです。
「ネガのスペース」に注目することで結果的に「ポジのスペース」を正確に把握することができるのです。

封筒の使い方(2)


(2)封筒を画面のどこに配置するか検討します。
たとえば人物の場合、何とな〜く頭部から描き始めるとのバランスが悪くなる場合があります。足がちょこっとはみ出たり、無理に納めようとして胴や脚が寸詰まりになったり・・・。
頭の位置を画面の中心に持ってくるのではなく、
封筒の画面全体に対する配置を考えます。


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封筒をどこに配置するかはあなたの「意図(狙う効果)」によります。特に決まりはありませんが、1枚の絵の中では「モデルに対する視点の高さ」と「背景に対する視点の高さ(水平線のこと)」は一致しなくてはおかしな絵になります。

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左:水平線より上の空間を意識した配置
右:水平線より下の空間を意識した配置

封筒の使い方(1)


(1)モチーフ全体が収まる封筒を想像するとき、特に
「足もとの想像線の傾き」をよく見ます。
モチーフが乗っている床面がどう見えているのか。これによって「描き手の視点とモチーフの位置関係」すなわち
「空間」が表現されます。


medir3
モチーフを見下げているときは床面が「起きて」見える。

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モチーフが視点と近い高さにあるときは床面は「寝て(薄く)」見える。


封筒とは

「封筒」とは
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モチーフ全体をすっぽり覆う入れ物を「封筒」(図の水色)と呼びます。
上の例ではひし形に近いですが、どんな形でもOKです。
腕や足などの長さのあるものを軸方向に沿ってズルズルッと描くと長さを「測り間違える」ことが多くなります。
長さではなく、傾きで囲まれた「平面的な形:○△◇・・・」に注目することで、「脚はこれだけの長さがあるはずだ」という思い込みに引きずられることを防ぐのです。


傾きの

長さ  vs.   傾き

・長さを測るのはジューロードー
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縦横比を測って、中心を求めて・・・ いかにも絵描きらしい光景ですが、
これは「作業」というか「労働」に近いのでは。
腕の伸ばし具合や、自分の頭の位置や立ち位置が少しでもずれるとツジツマが合わなくなります。
「長さ」はモデルとの「距離」に対して敏感なのです。
この作業が必要となることもありますので、「するな」と否定する訳ではありませんが、あまり楽しいプロセスには思えません。




・傾きはモデルとの距離とムカンケー
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「傾き」に注目するのはもっと感覚的なものです。
鼻歌まじりに、「こんな感じ〜♪」でいいのです。たとえ少し狂っていても・・・です! 特に遠近法による影響を正しくとらえるには「傾き」に対する注意力が必要となります。
ここでは、「観念」から「知覚」への転換を重視してます。
パーツの「名前」の呪縛から自由になるのにはまず「傾き」です。


デッサンのアプローチ

ここでは「具体的に」カタチを観察する方法を見てきましょう。

いわゆる「受験デッサン」は極東の文化的吹き止め(=日本)の「ローカルルール」「競技モード」でありまして、ひとつの到達点ではありますが、微妙な差異を「良し」「悪し」の基準にしてきた時代は終わりを迎えつつあるようです。
大事なのは微妙な差の優劣を競うことではなく、人生を豊かにするのに「役に立つ知識」を手に入れることです。
物事を「ありのまま」に見るのに必要なポイントそれほど多くはありません。ただ読むだけでなく実践し、体験を積むことで理解は進むでしょう。

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